犬の多飲多尿の原因を獣医師がわかりやすく解説

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小腸性下痢

多飲多尿って1日にどれくらいの尿が出て、
どれくらいの水を飲む状態なのか?
仮に愛犬(愛猫も含む)が多飲多尿だとして、
どんな原因が考えられるのか?開業獣医師がわかりやすく解説します。
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多飲多尿とは?

犬 尿崩症とは

多飲多尿ってどんな状態を指すのでしょう?
獣医学的には

飲水量が

・犬で体重1㎏あたり1日100mL以上
・猫で体重1㎏50mL以上

だと明らかに多飲の状態だといえるでしょう。
当然、普段の運動量や食べているものが缶詰なのか
ドライフードなのかによっても飲水量は影響を受けます。

缶詰だったら水分含有量が多いです。
逆にドライフードは水分含有量が少ないです。

なので、たとえば100gの缶詰を食べている犬や猫の方が
同じ量である100gのドライフードを食べている犬や猫よりも
純粋に水を飲む量は減るでしょう。

そういった意味で犬の1日の飲水量が
体重1㎏あたり100mL以上は多飲だと
決めつけるのは難しいこともあります。

ですが、一般的には犬だと1日に体重1㎏あたり100mL以上、
猫で1日に体重1㎏あたり50mL以上水を飲むようだったら
水の飲みすぎ(多飲)だと認定することが多い
です。

それから

尿量が

犬猫ともに1日体重1㎏あたり50mL以上

だと多尿といいます。

犬猫の多飲多尿の原因

もし愛犬や愛猫が多飲多尿だとわかったら、
次に原因は何か突き止めていく必要がありますね。

異常のないものなのか、それとも病気によるものなのか、
によって、治療をすべきか、様子見で良いのか
変わってきますから。

多飲多尿の原因として

・尿崩症(中枢性、腎性)
・浸透圧性
・その他

が考えられます。

尿崩症(にょうほうしょう)の場合、
脳下垂体後葉から分泌されるバソプレシンが出ないとか
出にくくなっている場合(これを中枢性という)や
バソプレシンが分泌されていても働きにくくなっている(腎性という)の2つの可能性があります。

パソプレシンというホルモンには
おしっこを濃くする作用があるんです。
具体的には腎臓の特に集合管で水分を再吸収する作用があります。

バソプレシンが出なくなると
オシッコを濃縮できず、薄い尿が大量に出ることになります。
濃縮する=濃くして液体の量を減らす行為ですからね。

「バソプレシンとか尿崩症とか難しくてわからないよ」という場合は
こちらの記事を先にご覧ください。
犬の尿崩症とは?獣医師が解説

それから浸透圧が関係して多尿のなるケースがあります。

あと、上記で『その他』と書いているのは
原因不明の多飲多尿を指します。

犬猫の多飲多尿の原因になる中枢性尿崩症とは?

バソプレシン

上記図をご覧ください(手書きなので汚くてすみません)。

(脳)下垂体後葉から分泌されるホルモンにはバソプレシン(抗利尿ホルモンとも)や
オキシトシンがあります。

とりあえず、
バソプレシンが分泌されなくなる原因は
(脳)下垂体の何かしらの異常です。

具体的には

バソプレシンが分泌されなくなる原因として

・腫瘍(ガンとか)
・奇形(生まれながらのもの)
・炎症(ばい菌とかウイルスの感染など)
・外傷(交通事故で頭を打ったとか)
・原因不明(特発性、検査したけど異常がない)

などが下垂体後葉に存在することが考えられます。

上記原因はMRIが完備された動物病院であれば
診断する事が可能
です。

MRIがないと、脳内に腫瘍があるかとか外傷や炎症があるか
診断が正確にはつきません。

もちろん、MRIだけでなく
血液検査やホルモン検査など、
いろんな検査を組み合わせる必要があります。

ただ、MRIは導入するのに数千万円かかるので
MRIがある動物病院なら血液検査やホルモン検査なども
当然実施可能ということから、
MRIがある動物病院であれば、中枢性尿崩症かどうか
診断は可能といえるでしょう。

犬猫の多飲多尿の原因になる腎性尿崩症とは?

腎性尿崩症とはバソプレシンは作れているけど、
バソプレシンが腎臓の尿細管レベルで働かないことで起こるものをいいます。

このことをバソプレシンの機能不全といいます。

バソプレシンの機能不全には

・遺伝性(原発性、生まれながら)
・二次性(生まれた後になってしまった)

があります。

遺伝性(原発性)はわかりやすくいうと原因がよくわからないけど
生まれながらバソプレシンが腎臓でうまく働かないタイプをいいます。

二次性はバソプレシンにより水分が再吸収されるところが
うまく機能しなくなるものをいいます。

で、二次性(腎性尿崩症)が多飲多尿の原因で一番多いです。

二次性腎性尿崩症

二次性腎性尿崩症には

・子宮蓄膿症(ばい菌が原因)
・膀胱炎(ばい菌が原因)
甲状腺機能亢進症
・高カルシウム血症
クッシング症候群
甲状腺機能低下症
・先端巨大症
・レプトスピラ感染症(ワクチンに含まれている)
・お薬(フェノバールとかステロイド、解熱鎮痛剤など)

などが考えられます。

上記で膀胱炎とか子宮蓄膿症でばい菌が原因と書いてますが、
具体的には大腸菌のエンドトキシンという有害物質が
バソプレシンの働きを抑えてしまうと考えられています。

浸透圧性多尿

浸透圧性多尿としては

・お薬(利尿剤など)
・糖尿病
・ファンコニー症候群
・慢性腎不全などの腎臓病

などが原因として考えられます。

ファンコニー症候群は血液中に高血糖を伴わない
腎臓での尿の再吸収の障害を起こす病気です。

詳しくはこちらをご覧ください。
犬のファンコニー症候群について【獣医師解説】

当院を受診している犬や猫で多いのは
糖尿病や腎不全による多飲多尿は浸透圧性多尿に分類されます。

あとは心臓病末期で処方されることが多い
利尿剤を飲んでも浸透圧性多尿を起こすケースがあります。
犬に使用できる利尿剤の種類一覧【獣医師監修】

浸透圧性多尿はたとえば糖尿病だと糖がたくさん腎臓に存在します。
糖は浸透圧が高いです。

浸透圧というのは誤解を恐れずに言うと、
濃度が薄いところから高い方へ物質を移動させる力のことです。

なので、浸透圧が高い方が低いより
いろんな物質を移動させる力が強いです。

ここでは浸透圧が高い=水を引きよさせる力が強い
と理解してください
(細かい説明をすると混乱するので
このくらいの理解でOKです)。

話しを元に戻して糖尿病になると糖分の量が腎臓内で増えます。
糖分は浸透圧が高いです。

だから、糖尿病になり腎臓に糖分が増えると、水分が引き寄せられる結果、オシッコ(水分)の量が増える(多尿になる)という
メカニズムです。

これが浸透圧性多尿です。

このメカニズムは慢性腎不全による多飲多尿でも同じです。
慢性腎不全の場合には腎臓内の組織が壊れてきます。
結果、ナトリウムの量が腎臓内で増えます。

このナトリウムの増加が原因で浸透圧が高くなるので
糖尿病と同様に多尿になってしまうんです。

で、浸透圧性多尿の場合は
オシッコは薄くなりません。

専門的には尿比重が1.012から1.030と普通くらいの比重です。
普通多飲多尿だとオシッコって薄まるので尿比重が
1.012より小さくなります。

でも浸透圧性多尿だと尿比重が小さくなりません
これは浸透圧が高いのである意味、圧でオシッコを増やしているからです。

その他の多飲多尿の原因

その他の多飲多尿の原因として

・心因性多尿(ストレスが原因)
・褐色細胞腫
・慢性消化器病
・肝臓病
・脾臓血管肉腫
・赤血球増多症
・クッシング症候群

などがあります。

クッシング症候群についてはこちらの記事をご覧ください。
犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
犬のクッシング症候群末期症状はどうなる?【獣医師解説】
犬のクッシング症候群の症状【獣医師監修】

次の記事では犬や猫の多飲多尿が病気かどうか
動物病院ではどうやって診断しているのか、
解説していきたいと思います。
犬猫が多飲多尿かどうか病院でどうやって診断するの?

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