犬猫の大腸性下痢と小腸性下痢の見分け方を獣医師が解説

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犬 下痢 原因

そもそも下痢とはどういうことかご存じですか?

犬も猫もそうですが、
通常より水分量が増加したウンチのことを下痢といいます。

今回の記事では犬猫の小腸性下痢と大腸性下痢の見分け方・違いについて
解説していきますが。まず先に基礎的な下痢の考え方について解説していきます。

犬猫が下痢したらどんな症状が他に起こるの?

犬の下痢

犬や猫が下痢をした場合、よく飼い主さんから言われるのが
「血混じりのウンチが出たんですけど・・・」です。

もちろん私は獣医師で、毎日犬や猫の診察をしています。
プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ

ちなみに血混じりのウンチを血便といいます。
ただ、血便といっても真っ赤な鮮血なのか、
あるいは黒い血液なのか、よく観察しましょう。

血便についてはこちらの記事で詳しく解説していますので
気になる方はご覧ください。
犬が血便をする原因とは?
犬がゼリーの混ざった血便をする原因は?
愛犬が血便をしていて食欲ない5つの原因

それから黒くない、真っ赤な血(鮮血)がついているときは
大腸に問題が存在すると考えてよいでしょう。
なぜなら血液というのは酸素とくっつくと酸化して黒っぽくなります。
血液には鉄分が入っているからです。

ですので、小腸という胃に近いところで出血があったら、
大腸を通って、うんちとして出るまでに時間がかかるので
その間に酸素とくっつきます。
結果、うんちについた血液は黒っぽくなります。

逆にうんちが出る直前である大腸からの出血なら、
すぐにうんちとして出ていくので酸素とくっつく余裕がありません。
結果、鮮血の血便になるわけですね。

それから粘液がついた便も大腸が原因で出ることが多いです。

あとウンチをしたそうな仕草をしている状態を『しぶり』といいますが
しぶりは肛門近くに問題が存在することがほとんどです。

ちなみにしぶりと排便困難は違います。
排便困難はウンチが出ない状態です。

排便困難の原因には雄犬で起こる会陰ヘルニアとか
尿道の病気とか骨盤腔の問題でも起こることがあります。

ではここからが本題です。

大腸性下痢と小腸性下痢の見分け方について解説していきます。

大腸性下痢と小腸性下痢を区別する前に

小腸性下痢

下痢の診断を考える時に

・急性か慢性か
・小腸性下痢(小腸が原因)か大腸性下痢(大腸が原因)か

常に頭においておくことが重要だと獣医師として考えています。
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そこで診察する時、
犬や猫の体を触診する前に飼い主さんから話をしっかり聞くことにしています。

まず今までどんな下痢の症状を起こす病気をしてきたか?とか
今回の下痢はいつごろから起きているのか?飼い主さんに聞きます。

たとえば現在5歳のワンちゃんだけど、
生後6カ月あたりからずっと下痢を繰り返しているとしましょう。
ここで慢性下痢とは、人によって若干定義が違いますが、
2週間から3週間以上下痢が続く状態をいいます。

ですので、2週間以上続くような下痢をずっと繰り返しているような慢性下痢が
良く起こるようなら、食事の不耐性とか食事性アレルギーとか
膵外分泌不全などの病気の可能性があります。

それから田んぼ周辺が散歩コースだと、
農薬が口に入ってワンちゃんが下痢をするケースもあります。
また、田んぼが散歩コースでなくても、
腐った食べ物を拾い食いしていないか?お聞きします。

大腸性下痢と小腸性下痢の見分け方

こちらは先日下痢で来院してきたワンちゃんです。

大腸性下痢

ところで小腸性下痢と大腸性下痢の違いを表でまとめてみました。

小腸性下痢 大腸性下痢
体重が変化するか? 体重が減ることが多い 変化しないことが多い
ウンチの量 増えることが多い ウンチの回数が増えるため、1回の量が減ることがある
ウンチの回数 いつも通り 増えることが多い
ウンチする仕草を見せるけど出ない ほとんどない よくある
鮮血(真っ赤な血液) ない(黒い便が出ることあり) ある
消化管出血(メレナ) まれにある ない

体重が減るかどうか?ですが、特に慢性の小腸性下痢だと起こることがあります。
長期間下痢が続くので、栄養を吸収することができず、体重が落ちるんですね。
栄養は基本的に小腸で吸収しますからね。

逆に大腸が原因で起こる大腸性下痢だと、
栄養を小腸で吸収した後に下痢が起きているわけですから
体重が落ちるケースは少ないです。

それからウンチの量は小腸性だと単純に増えることが多いです。
なぜなら下痢というのは何らかの原因で腸から水分の吸収が落ちているから起こります。
普段のウンチの量に加えて水分も足されますし、栄養の吸収も落ち
そのまま便として出るからです。

大腸性下痢だと、肛門近くで下痢がおこるため、
ウンチをしたい衝動にかられ(しぶりと言います)、うんちの回数が増える結果、
1回のウンチの量は減ります。

膀胱炎だとオシッコしたい衝動にかられるので
回数は増えるけど、1回の量が減るのと同じ理屈です。

ですので、しぶりの症状があってうんちの回数が多い場合には
大腸性下痢の可能性が高いでしょう。

それから鮮血(真っ赤な血)は出血してすぐの血液です。
血液は空気と触れる時間が長いと酸化して黒くなってきます。

ですので、肛門の出口近くで起こる大腸性下痢だと
空気に触れる時間が短いので鮮血便となりやすいです。
逆に小腸性下痢だと、出血してから肛門から出るまで時間がかかるため
酸化して黒い便が出ることが多いです。

最後にメレナというのはたとえば、口周りの腫瘍が破裂して
大量出血したとか、胃や食道の腫瘍が破裂して大量出血したみたいなケースです。

大腸性下痢と小腸性下痢の原因

まず大腸性下痢でも小腸性下痢でもどちらの原因にもなり得るものとして

・食事性(アレルギー、食中毒、急激に食事を変えたなど)
・ウイルス性(パルボウイルス、コロナウイルス、ロタウイルスなど)
・ばい菌(サルモネラ菌、大腸菌、キャンピロバクター菌、エルシニア菌など)
・寄生虫(ジアルジア、トリコモナス、蠕虫など)
・胃腸炎
・腸重積
・毒物を飲んだ
・膵炎
・副腎皮質機能低下症
など

が考えられます。
犬の下痢でどんな時に抗生剤が必要になるの?【獣医師解説】

小腸性下痢を起こすものとして

・膵外分泌不全
・抗生物質が原因で起こる下痢
・炎症性腸疾患
・リンパ腫
・リンパ管拡張症
・消化管出血
・鉤虫が大量に寄生している

などが考えられます。

大腸性下痢を起こすものとして

・食事アレルギー
・過敏性腸症
・ジアルジアの感染
・クロストリジウム菌による大腸炎
・猫だと猫エイズ、猫白血病
・腺癌

などが考えられます。

猫エイズや猫白血病というウイルス疾患についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)について獣医師がわかりやすく解説
猫白血病ウイルス感染症の予防・診断などについて獣医師が解説

あとボクサーとフレンチブルドッグで起こりやすい特殊な大腸性下痢の原因として
組織球性潰瘍性大腸炎があります。
特に若齢犬に多いです。

珍しい病気なのですが、ばい菌が関係しているのでは?
と言われていて、こちらの記事で解説している抗生物質で治療することが多いです。
組織球性潰瘍性大腸炎で使う抗生物質

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