犬の肥満細胞腫症状:正しい知識で対処しよう【獣医師解説】

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犬 肥満細胞腫 症状

前回の記事で犬にできる肥満細胞腫の特徴について解説しました。
犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説

今回の記事では犬に肥満細胞腫ができたら
どんな症状が出るのか?実際に犬の診察をしている獣医師が解説します。
プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ

犬の皮膚に肥満細胞腫ができたときの症状

肥満細胞腫

犬の肥満細胞腫は皮膚か皮膚以外の場所にできます。
まずは皮膚にできる肥満細胞腫の症状から解説します。

肥満細胞腫というのは肥満細胞という細胞が腫瘍化する病気の一種です。
肥満になるとできるガンではありません。

肥満細胞の特徴については別の記事で解説しています。
気になる方はこちらをご覧ください。
犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説

話を元に戻します。
犬にできる肥満細胞腫の90%は皮膚にできるという特徴があります。
逆にいうと残り10%は皮膚以外の場所にできるってことですね。

で、犬の皮膚に肥満細胞腫ができるといっても
具体的にどんな場所にシコリ(腫瘍)ができるのでしょう?

犬の皮膚にできる肥満細胞腫は

・体幹から陰部の周りに約5割
・四肢に約4割、
・頭から首にかけて約1割

の割合でできるといわれています。

肥満細胞腫

では皮膚に肥満細胞腫ができた場合、
どんな症状が出るのでしょう?
皮膚の場合は、炎症を起こして赤く腫れることがあったり
シコリから出血することがあります。

どうしてそんな症状が出るのか?
理由は後で(腫瘍随伴症候群のところ)で解説します。

とはいえもしシコリから出血したり
シコリが赤く腫れるようなことがあったら心配です。
そもそも犬にできる肥満細胞腫はほぼほぼ悪性です。
放っておいたら全身に転移して手遅れになることもあります。
なのでシコリから出血したりシコリが赤くなった場合は
スグに動物病院に連れて行ってください。

犬の内臓に肥満細胞腫ができたときの症状

ここまで犬の皮膚に肥満細胞腫ができた場合の
症状について解説しました。

次は犬の内臓に肥満細胞腫ができる場合について解説します。
犬の体のどこかに肥満細胞腫ができる場合、
9割は皮膚ですが、残り約1割は内臓にできるといわれています。

ただ内臓にできた肥満細胞腫のほとんどは
皮膚にできた肥満細胞腫が転移したもの
です。
先ほども言いましたが犬にできる肥満細胞腫のほとんどは悪性です。
悪性腫瘍の特徴は転移することです。

なので、皮膚にできた肥満細胞腫を
放置していると内臓に転移してしまうことがあります。

では具体的にどんな場所に肥満細胞腫ができるのでしょう?

犬の皮膚以外にできる肥満細胞腫は

・肝臓
・脾臓
・リンパ節
・骨髄

などにできやすいです。
できやすいというか転移しやすいと言った方が適切な表現かもしれませんね。

では内臓に肥満細胞腫ができた場合
どんな症状が出ることがあるのでしょう?

内臓に肥満細胞腫ができると
嘔吐や食欲不振の症状が出たり、
内臓からの出血の影響で血便が出たり
出血がひどい場合には貧血の症状が出ることもあります。

胸水や腹水がたまることもあります。

肥満細胞とは?

細胞質

さらに詳しく犬の肥満細胞腫の症状について解説するために
肥満細胞について簡単に解説します。

肥満細胞の特徴は

・人間にも犬にも猫にも存在する
・骨髄由来の細胞
・炎症、アレルギー反応など体を守るための反応に重要な役割を果たす
・肥満細胞の細胞質にはヒスタミンやヘパリンなどいろんな物質が存在する
参考)細胞質とは細胞の細胞膜に囲まれた中で核以外の領域のこと

ヒスタミン

では肥満細胞はどんな物質を分泌するのでしょう?

肥満細胞が分泌する物質例として

ヒスタミン・・・蚊に刺された時に痒くなる作用や胃酸の分泌促進の結果胃潰瘍の原因にもなる
ヘパリン・・・血が止まりにくくなる(血が固まらないようになる)

です。

肥満細胞腫というのは肥満細胞が腫瘍化する病気。
腫瘍化した肥満細胞からヒスタミンやヘパリンが異常に出る結果、
これから解説する腫瘍随伴症候群を起こしやすくなります。

腫瘍随伴症候群

腫瘍随伴症候群とは肥満細胞腫ができた場所から離れたところで
肥満細胞腫が原因で見られる体調の変化(症状)のことです。

腫瘍随伴症候群を起こすとどんな症状が出るか?
知っておくことで肥満細胞腫かどうか判断しやすくなる 逆に腫瘍随伴症候群を知らないと肥満細胞腫を見逃す危険性があります。

では腫瘍随伴症候群にはどんなものがあるのでしょう?

たとえば肥満細胞腫ができた部分を犬が舐めたり
齧ったりすることで刺激されることでヒスタミンが放出されます。
放出されたヒスタミンの作用によりシコリの周囲の血管が拡張します。
血管が拡張すると拡がった分だけ血液が流れやすくなります(血流が増加する)。
その結果、シコリの周囲が赤く見えるという症状が出ることがあります。
これをダリエ徴候といいます。

進行すると犬に痒みや痛みの症状が出てきて
気にしてなめたりかきむしったりといった症状が出ることもあります。
かきむしって出血したら肥満細胞から分泌されるヘパリンによって
血が止まりにくくなったりします。

他には外からの刺激(齧る舐める、なでるなど)によりヒスタミン放出され
全身的に血圧低下を起こしショック症状を起こすこともあります。
また、ヒスタミンの影響で胃液が過剰に分泌され胃潰瘍を起こしたり
吐き気の症状がでることもあります。

なので注意して欲しいこととしては
腫瘍化した肥満細胞をもんだり触ったりと刺激しないようにお願いします。
もし刺激してしまったら
肥満細胞腫からヘパリンやヒスタミンが分泌され
その影響で真っ赤に腫れあがることがあります。
それだけじゃなくて先ほど解説したように
低血圧になりショック症状を引き起こす可能性だってあります。
だから絶対に触らないようにお願いします。

ちなみに動物病院では肥満細胞腫を触った後は
抗ヒスタミン薬を投与します。
肥満細胞腫を触るとヒスタミンが分泌され
腫瘍随伴症候群を引き起こす可能性があるからです。
抗ヒスタミン薬はこちらがおすすめです。
アタラックス(Atarax)25mg

続いて犬にできる肥満細胞腫の特徴について解説した記事があるのでご覧ください。
犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説

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