犬の肥満細胞腫と進行速度:早期発見の重要性【獣医師解説】

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犬 肥満細胞腫 進行速度

肥満細胞腫とは動物や人間のの体内に存在する細胞の一種である
肥満細胞が腫瘍化する腫瘍のことです。
肥満細胞腫ができると腫瘍化した肥満細胞が無制限に増えていきます。
その結果、皮膚や皮下にシコリを作ったり全身に転移してしまう恐ろしい病気です。

肥満細胞腫の症状や特徴などについては
以下の記事で解説しています。
犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説
犬の肥満細胞腫症状:正しい知識で対処しよう【獣医師解説】

それではここから本題に入っていきます。
今回の記事では犬の肥満細胞腫と進行速度について解説します。
結論を知りたい方は記事下までスクロールしてください。

犬の肥満細胞腫の悪性度(進行速度に影響

まず重要なことがあります。
犬にできる肥満細胞腫は基本的に悪性腫瘍です。
悪性腫瘍というのは全身に転移し命の危険性を伴う腫瘍のことです。
悪性腫瘍の反対の言葉が良性腫瘍になります。
良性腫瘍は転移しない腫瘍のことです。

ちなみに犬にできる肥満細胞腫は悪性ですが
猫にできる肥満細胞腫は良性です。
動物種によって同じ腫瘍でも良性か悪性か違ってくるわけですね。

で、犬の肥満細胞腫は悪性腫瘍の一種です。
そしてどれくらい悪いものか?誰が見てもわかる指標として
悪性度(グレード)というものがあります。
悪性度によって肥満細胞腫の進行速度や治療方法が違ってきます。

肥満細胞腫の場合、グレード1から3の3つあって
数字が大きいほど悪性度が高いです。
つまりグレード1よりグレード3の方が悪性度が高いです。

病理検査

グレードがいくらか?どうやって診断するかというと
手術し摘出した肥満細胞腫を病理組織検査して決定します。

逆にいうとグレードは手術しないとわかならいことが多いということです。

ただ、手術前に肉眼的にシコリをみたり
シコリに針を刺し細胞を採取して
簡易的に判断する細胞診で目安をつけることもあります。

病理組織検査とは?

病理組織検査

病理組織検査は単に病理検査ということもありますが、
腫瘍全体あるいは一部だけを切除して
特殊な染色をするなど加工して顕微鏡で検査すること
をいいます。

病理組織検査は難しい検査なので診断は病理専門医が行うことが多いです。
ただ病理専門医ってどこにでもいるわけではありません。
専門のトレーニングを経験してやっと
病理検査ができる能力が身に付きます。

そんなこともあって
病理組織検査は病理専門医が所属している
外の機関にお願いするのが一般的です。
病理専門医を自分の動物病院で雇ったらコスパが悪すぎです。
動物病院は診察がメインで病理検査がメインではありませんからね。
プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ

ちなみに
細胞診検査は病理組織検査とは違います。
細胞診検査は腫瘍部分を針で刺して細胞を採取して顕微鏡で診る診断方法です。
細胞そのものを顕微鏡でみて診断する手法のことです。
ちなみに細胞の集合体が組織です。

病理組織検査と細胞診検査の違い

犬の診察

細胞診検査は腫瘍に針を刺して細胞を採取して
顕微鏡で調べる検査手法です。
ということは一部の細胞しか採取できないってことになります。

もしかしたら病変をきちんと採取できないかもしれません。
となると確定診断が難しいですね。
ただ、細胞診検査の場合は麻酔をかける必要がない場合がほとんどです。
注射みたいに針を刺すだけなので。

だから細胞診検査は手軽に仮診断をつけるのには有益な検査手法だといえます。
しかも簡単な検査なので料金も安くすみます。

これに対して病理組織検査は腫瘍全体(あるいは一部)を採取して
顕微鏡で検査します。
腫瘍全体を調べるので情報量が細胞診よりも多くなるため
確定診断できる可能性が高いです。

ただし病理組織検査の場合、全身麻酔が必要になります。
シコリを摘出してから行う検査ですからね。
無麻酔では無理です。
ということは手術と同時に病理組織検査も行うということになります。
ただ組織全体を検査するので料金は高いです。

私自身が経験した症例で
尻尾にできた腫瘍に対して針を刺して細胞採取し
外注検査で細胞診してもらったところリンパ腫だと診断されたため
2次医療ができる動物病院を紹介しました。

そこで断尾手術をして腫瘍を摘出。
その後病理組織検査でただの炎症だった
という経験があります。
ちなみに細胞診も病理組織検査も同じ会社の同じ専門医が担当しています。

同じ病理専門医が診断しても
細胞診と病理組織検査で結果が違うことは
よくあると個人的には感じています。

犬の肥満細胞腫グレード1

グレード1は最も悪性度が低いです。
一般的に皮膚の表面にできる大きさ1㎝以下のシコリが該当します。
周りへの浸潤もほとんどしていません。
手術で全摘出可能手術だけで完治する可能性が高いです。
転移はしにくく再発もしにくいです。
全摘出が可能だからです。

犬の肥満細胞腫グレード2

2番目(中間)の悪性度で転移する可能性がありますし再発の可能性もあります。
完全に取りきるために周りの正常組織と一緒に広範囲に切除手術をする必要があります。
手術後も抗がん剤治療や放射線治療が必要な場合もあります。
術後に検査をして慎重な判断が必要です。

犬の肥満細胞腫グレード3

最も悪性度が高く勢いよく増殖し急激に進行しますから再発もしやすいです。
病理組織診断でグレード3だとわかったときにはすでに転移していることが多いです。
切除手術だけで治療終了にはならないのが一般的です。
そのため治療が最も困難。
手術以外に抗がん剤治療や放射線治療を行うのが一般的になります。

犬の肥満細胞腫ステージ分類

いろんな検査をして主治医が判断します。

ステージ1 皮膚に1個のシコリがあるけど所属リンパ節への転移はないもの
ステージ2 皮膚に1個のシコリがあって、しかも所属リンパ節への転移がある
ステージ3 所属リンパ節への転移は無関係で
周囲にシコリが広がっているいるかあるいは複数のシコリがある
ステージ4 遠隔転移がある、あるいは再発がある

犬の肥満細胞腫進行速度

リンパ管

皮膚に最初にできた肥満細胞腫(原発巣という)
の一部がリンパ管からリンパ節へと流れていきます。

リンパ節転移
そうやってリンパ節転移します。
その後さらに遠くの場所にあるリンパ節や臓器に転移します。
転移しやすい臓器は肝臓や脾臓です。
こういうのを遠隔転移といって治療が困難です。

犬の肥満細胞腫の進行速度は腫瘍が存在する場所やグレードで違ってくるということです。
成長がゆっくりなものもあるし急速に大きくなるものまであります。
しかも大きくなったり小さくなったりするため
腫瘍大きさだけで進行速度や予後を判断できません。

例えば、陰嚢、鼻にできた肥満細胞腫の進行速度は他と比べて速いし転移しやすい
といわれていたりします。

ちなみに動物病院では肥満細胞腫を細胞診検査するなどして触った後は
抗ヒスタミン薬を投与します。
肥満細胞腫を触るとヒスタミンが分泌され
腫瘍随伴症候群を引き起こす可能性があるからです。
犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説

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