前回の記事までで犬のクッシング症候群の原因や症状について解説してきました。
⇒犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
⇒犬のクッシング症候群末期症状はどうなる?【獣医師解説】
⇒犬のクッシング症候群の症状【獣医師監修】
⇒犬のクッシング症候群の治療費と治療方法【獣医師解説】
今回は獣医師である私が日々、どうやって
ワンちゃんがクッシング症候群かどうか診断しているのか
解説していきたいと思います。
⇒プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ
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犬のクッシング症候群の診断方法
目次
ではどうやってワンちゃんがクッシング症候群かどうか、
診断するのでしょうか?
まずは前回解説した症状であったり、血液検査のデータから
クッシング症候群が疑われていることが前提になります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
⇒犬のクッシング症候群の症状【獣医師監修】
で、いかにも「クッシング症候群の可能性が高いな」となったら
以下の診断方法を使っていくことになります。
犬のクッシング症候群の診断方法としては
・ACTH刺激試験
・尿中コルチゾール/クレアチニン比から診断する方法
・低用量デキサメタゾン抑制試験
などがあります。
で、上記の検査だけやれば100%クッシング症候群を診断できるわけではありません。
あくまでも症状や一般的な血液検査のデータ(ALP上昇とか)や
上記の診断方法を組み合わせていくことで
クッシング症候群を診断していくことになります。
犬のクッシング症候群の診断方法:尿中コルチゾール/クレアチニン比
尿中コルチゾール/クレアチニン比から診断する方法に関しては
ワンちゃんにストレスがかかっていると結果に影響が出てしまいます。
なので、自宅でワンちゃんのオシッコを採ってきてもらうことになります。
そしてオシッコ中のコルチゾールの値を測定します。
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犬のクッシング症候群の診断方法:ACTH刺激試験
ACTH刺激試験は1時間で検査が終わるので
時間に余裕がない飼い主さんのワンちゃんによく使われる検査方法の1つです。
やり方はコートロシンという注射を体重1㎏あたり5㎍以上静脈注射か
筋肉注射するだけです。
ちなみにコートロシンは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の成分が入った注射剤です。
それで、注射前と注射後1時間後のコルチゾールの値を測定すればOKです。
で、
検査した結果1時間後のコルチゾールの量が
・正常よりも低い(0時間と比べてまったく増えていない)なら医原性クッシング症候群
・正常は18μg/dL未満
・18~22μg/dLならクッシング症候群疑い
・22μg/dLを超えるならクッシング症候群の可能性が高い
と診断します。
この試験は低用量デキサメタゾン試験と比べると感度が低いというデメリットがあります。
そのため、次のように低用量デキサメタゾン試験を行うことがあります。
犬のクッシング症候群の診断方法:低用量デキサメタゾン試験
低用量デキサメタゾン試験は診断までにすごく時間がかかるというデメリットがあります。
どれくらいの時間がかかるか?というと8時間かかります。
ある意味、朝から晩までかかるってことです。
飼い主さんが朝10時にワンちゃんを連れてきても
診断がつくのは夜の6時(18時)になるってことです。
短気の人だとしんどい検査になるでしょう。
そういった意味で動物病院側としてはやりづらい検査になります。
でも、多くの動物病院ではクッシング症候群を疑う症例に対しては
よくやる診断方法となります。
なぜよくやるのか?というと、
感度がすごくいいからです。
はっきりとクッシング症候群のワンちゃんかどうか
診断して上げやすい検査だということです。
検査のやり方としてはまず体重1㎏あたり0.01mgのデキサメタゾンを
ワンちゃんに静脈注射します。
すると、、、
正常なワンちゃんであれば、デキサメタゾンを注射すると
ステロイドが体内で増えたと脳下垂体に伝えられます。
結果、ネガティブフィードバックが脳下垂体に起こるため
ACTHの分泌量が減り、副腎から分泌されるコルチゾールの量が減ります。
よって、投与前のコルチゾール量は8時間後には0に近づくようなグラフになります。
専門的には『抑制がかかっている』と表現します。
この辺の意味が分からない方はこちらで解説しています。
⇒犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
もし下垂体性か副腎腫瘍性のクッシング症候群なら、、、
まず注射して8時間後のデータを見ましょう。
すると、8時間のときに抑制がかかっていない(コルチゾール量が0に近づいていない)なら
クッシング症候群と一致する変化だと推測できます。
次に4時間後のデータを見ましょう。
それで抑制がかかっているなら下垂体性のクッシング症候群の可能性が高く
抑制がかかっていないなら副腎腫瘍性のクッシング症候群の可能性が高いと推測できます。
ただ、上記グラフからも明らかなとおり、
下垂体性であれば4時間後のところで抑制がかかることもあれば、
かからないこともあります。
逆に副腎腫瘍であれば抑制はかかりません。
(横にまっすぐに近いようなグラフになります)
なぜなら脳の機能とは無関係だからです。
低用量のデキサメタゾンを注射し、下垂体にネガティブフィードバックをかけても
腫瘍化した副腎はどんどんコルチゾールを分泌します。
低用量デキサメタゾン試験は
・注射後8時間の時点で抑制がかかっているなら正常
・注射後4時間でも8時間でも抑制がかかってないなら副腎腫瘍性と下垂体性の可能性
・注射後4時間で抑制かかるが、8時間後は抑制かかってないなら下垂体性の可能性
と診断できます。
以上が基本的な診断方法となります。
ただ、注意点があります。
コルチゾールはストレスがかかると正常でも分泌されるホルモンです。
なので、8時間の検査中、ワンちゃんを動物病院で預かっている場合、
超音波検査やレントゲン検査をやったり、やたらとスタッフが構いすぎると
ストレスからコルチゾールが余分に分泌され、
検査結果を読み間違える可能性があります。
なので、検査が終わるまでワンちゃんをリラックスさせるような
意識は重要になります。
この辺はこの記事を読んでいる飼い主さんも
動物病院側がこのことを理解しているかチェックしておくべきでしょう。
でないと誤診され、いろんな薬を飲まされたりでもしたら
たまったものではないからです。
ワンちゃんも苦しいですし、飼い主さんもお金も時間も失う羽目になりますからね。
犬のクッシング症候群の診断方法:下垂体性か副腎腫瘍性かの鑑別
ここまでの検査でどうやらクッシング症候群の可能性が高いとなったら
次に下垂体が原因か、副腎が原因か確認します。
⇒犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
副腎腫瘍か下垂体か診断するために
・超音波検査
・CT検査
・高用量デキサメタゾン抑制試験
・内因性ACTH測定試験
などを行います。
たとえば、CT検査や超音波検査を利用して、
明らかに見た目的に片方の副腎の方が大きいということなら
副腎腫瘍が原因でクッシング症候群になっている可能性が高いです。
これは前回解説した原因を理解していれば
わかっていただけることだと思います。
⇒犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
でもCT検査や超音波検査といった画像診断ではっきりしない場合には
次に高用量デキサメタゾン抑制試験や内因性ACTH測定試験を実施することになります。
犬のクッシング症候群の診断方法:高用量デキサメタゾン抑制試験
高用量デキサメタゾン抑制試験はは先ほど解説した低用量デキサメタゾン試験の
10倍多い量である体重1㎏あたり0.1mgを静脈注射して行います。
だから『高用量』デキサメタゾン抑制試験っていいます。
これで、コルチゾール量が増えるかどうか判断します。
それで下垂体腫瘍が原因か副腎腫瘍が原因か診断をつけていきます。
で、注射後4時間でも8時間でもコルチゾールが増えなければ
100%下垂体性クッシング症候群だと診断します。
犬のクッシング症候群の診断方法:内因性ACTH測定試験
クッシング症候群疑いのワンちゃんの血漿を
外部の業者にお願いして即手してもらいます。
で、下垂体性クッシング症候群であればACTHが分泌されているし
副腎性クッシング症候群であればコルチゾールが副腎からたくさん分泌され、
内因性のACTH(下垂体からのホルモン)の量が明らかに減っているので診断がつきます。
もしこちらの記事を読んでいない方はぜひご覧ください。
⇒犬のクッシング症候群が起こる原因【獣医師監修】
⇒犬のクッシング症候群末期症状はどうなる?【獣医師解説】
⇒犬のクッシング症候群の症状【獣医師監修】
⇒犬のクッシング症候群の治療費と治療方法【獣医師解説】