この記事では私が日々診察していて、
よく飼い主さんから聞かれる犬の高脂血症の原因について
わかりやすく解説していきたいと思います。
⇒プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ
もし、すでにワンちゃんが高脂血症だと診断されている場合には
こちらの記事をご覧ください。
⇒愛犬が高脂血症と診断されたら治療と薬【獣医師監修】
・ネクスガードスペクトラ(超小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(中型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(大型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(超大型犬用)
高脂血症とは?
高脂血症とはどんな状態をいうのでしょう?
基本的には高トリグリセリド(TG)血症単品、
もしくは高コレステロール(Chol)血症単品、
もしくは高トリグリセリド血症と高コレステロール血症の両方があるパターンをいいます。
高トリグリセリド血症とか高コレステロール血症って
どうやって診断するのか?というと
採血をして上記のような血液検査の機械を使って行います。
ちなみに、採血をした後の血液って当然赤いわけですが、
高トリグリセリド血症の血液は白く見えることがあります。
でも、逆に白く見えなくても高トリグリセリド血症ってこともあります。
なので、採血した血液を肉眼だけで高脂血症かどうか診断しないようにしています。
これは経験則です。
犬の高脂血症について理解するために
高脂血症の原因について理解するためにまず脂質について
理解しておきましょう。
上の図をご覧ください。
リポタンパク質というタンパク質があります。
今回のテーマになる脂質には
・トリグリセリド(TG)
・コレステロール(Chol)
があります。
で、水と油の関係っていうように
脂質は水に溶けません。
でも、脂質は血液中に存在していますね。
なぜならあなたも受ける健康診断の中の血液検査で
「コレステロールやトリグリセリドの値が高かったよ」みたいな会話があることから
明らかです。
血液検査でわかる=血液中に存在しているってことですから。
でも、血液って固形成分もありますけど、液体成分(水の成分)も存在します。
とはいえ、脂質は水に溶けません。
じゃ、どうなってるの?
ということになりますが、脂質は必ずアポタンパク質とくっついて
血液中を循環しているんですね。
そして脂質(コレステロールやトリグリセリド)+アポタンパク質=リポタンパク質といいます。
そして
リポタンパク質は
・カイロミクロン
・超低比重リポタンパク質(VLDL)
・低比重リポタンパク質(LDL)
・高比重リポタンパク質(HDL)
などに分かれます。
他にも中間比重リポタンパク質(IDL)もありますが
今回は割愛します。
ここまでよろしいでしょうか?
ではもう1度図をご覧ください。
カイロミクロンとVLDLは基本的にトリグリセリドを主体に輸送します。
それからLDLとHDLは基本的にコレステロールを主体に輸送します。
もうちょっと詳しく解説しておきますね。
外因系(食事が関係)の場合、ドッグフードをワンちゃんが食べると
胃を通って腸に行き、腸から吸収されます。
で、ドッグフード中の脂肪も腸から吸収され、腸管のリンパ管を通って
全身の血液に入っていきますが、そこに関わるのがカイロミクロンになります。
血管の中で徐々に主にトリグリセリドが脂肪組織や筋肉に受け渡しをしていきます。
そこに関わっているのが細かいですが、リポプロテインリパーゼです。
リポプロテインリパーゼは血管内皮細胞などに発現していて
脂肪酸などを分離して取り込んでいきます。
こうやってトリグリセリドを他の組織に輸送させながら
肝臓に最終的に取り込まれていきます。
これが外因系です。
内因系は体の中の脂肪の輸送に関わりますが、
VLDL、HDL、LDLがありますが、
VLDLは脂肪組織や筋肉にトリグリセリドを輸送していきます。
トリグリセリドがどんどん抜けていくとコレステロールが中心になっていくので
LDL、HDLなどが作られてコレステロールを運びます。
・ネクスガードスペクトラ(超小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(中型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(大型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(超大型犬用)
犬猫はなぜ心筋梗塞や動脈硬化がほとんど起こらないの?
LDLとかHDLの割合って人と犬猫で大きく違います。
天と地ほどの差があるってことです。
よく「善玉コレステロールとか悪玉コレステロール」とか人間の世界では言われていますね。
LDLは肝臓で作られたコレステロールを血管へと輸送する作用があります。
なので、もしLDLが過剰になると、血管にくっついて血管障害を起こし
心筋梗塞とか動脈硬化を引き起こすと人間の世界では言われています。
だからLDLは悪玉ってことです。
逆にHDLは悪玉のLDLを向こうへどかして
コレステロールを肝臓に輸送する作用があります。
血管に存在するコレステロールが肝臓に移動してくれるので
HDLは善玉って言われたりするわけですね。
なのでLDLが悪玉でHDLが善玉みたいなイメージを持っている人が多いかもしれません。
でも、犬猫と人間では割合が違います。
LDL(悪玉)は人間だと約67%、犬猫だと33%で人間は多いけど犬猫は少ないです。
逆にHDL(善玉)は人間で約33%、犬猫だと約67%で犬猫の方が多いです。
つまり人間は悪玉の方が善玉より多いけど、
犬猫は悪玉より善玉の方が多いわけです。
どうして犬猫と人間でHDLとLDLの割合が逆転しているのか?
原因・理由はわかっていません。
ただ、犬猫だと心筋梗塞などの血管障害が少ない理由は
LDLやHDLの割合が違うからではないか?と考えられています。
実際、犬猫で高コレステロール血症だけが問題になるケースはほとんどありません。
そういった意味で、人間ほど高脂血症を問題視するケースは少ない印象がありますね。
では本題に入っていきましょう。
犬が高脂血症を起こす原因とは?
犬が高脂血症を起こす主な原因としては
食事の影響が大きいでしょう。
食事はカイロミクロン(主にトリグリセリドが入っている)が関係してくるんでしたね。
先ほどの外因系のところを参考にしてくださいね。
ですから、食事が関係する高脂血症は高トリグリセリド(TG)血症となります。
まれに高コレステロール血症ということもありますが、
ほぼほぼ食事が関係する高脂血症は高トリグリセリド血症です。
どのくらいまで影響を受けるか?
はっきりとはしていませんが、長いものだと14時間くらい影響することがあります。
なので、高トリグリセリド血症かどうか診断するためには
少なくとも15時間くらいワンちゃんを絶食させてから血液検査することになります。
そのほかの高脂血症の原因としては
内分泌疾患が多いですね。
代表的には糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下症が考えられます。
他にも膵炎なんかでも高トリグリセリド血症になることがありますね。
あと、蛋白漏出性腎症だとトリグリセリドは影響しませんが
高コレステロール血症になることがあります。
なぜ蛋白漏出性腎症だと高コレステロール血症になるのでしょう?
はっきりとはしていませんが、
代償性にリポタンパク質であるLDLとかHDLを体が作ることによって
高コレステロール血症になっているのではないか?
と考えられています。
ただ、蛋白漏出性腸症だと
コレステロールなどが漏れ出るので低コレステロールになることが多いです。
あとステロイドのお薬を飲んでも
高脂血症を起こすこともあります。
最後に明らかな原因がない高脂血症は原発性とか特発性とか家族性と
言われる分類になります。
犬の原発性高脂血症
犬の原発性高脂血症は
・ミニチュアシュナウザー
・シェルティ
・ビーグル
などで良く起こりますね。
ただ、ミニチュアシュナウザーは生まれつき高脂血症なわけではありません。
9歳前後になってはじめて高脂血症になってくるケースが多いです。
続いて高脂血症によりどんな症状が出るのか解説します。
⇒犬の高脂血症の症状【獣医師解説】
高脂血症の治療方法を知りたい方はこちら
⇒愛犬が高脂血症と診断されたら治療と薬【獣医師監修】