甲状腺の病気といっても
犬と猫ではなる病気が違います。
犬は甲状腺機能低下症になりやすいですが
猫は甲状腺機能亢進症になりやすいです。
甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが不足する病気ですが
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰になる病気です。
なので、犬と猫ではまったく逆の病気になるということです。
ところで、甲状腺機能低下症の診察をしていると
貧血で舌が真っ青になっている犬をみかけることがあります。
もちろん私は現役の獣医師です。
で、貧血には
・再生性貧血
・非再生性貧血
がありますが、甲状腺機能低下症による貧血は
非再生性貧血です。
非再生性貧血ってどういう貧血なのでしょう?
あと、記事の後半で甲状腺機能低下症が原因でどうして
犬が貧血を起こすのか解説します。
・ネクスガードスペクトラ(超小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(小型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(中型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(大型犬用)
・ネクスガードスペクトラ(超大型犬用)
犬が甲状腺機能低下症で起こる非再生性貧血とは?
・再生性貧血
・非再生性貧血
の2種類に分かれます。
貧血は大きく再生性貧血と非再生性貧血に分類され、それぞれ以下のような原因が考えられます。
治療は原因によって異なりますが、生命が脅かされるような重度の貧血の場合には、輸血が必要となります。
再生性貧血
赤血球が作られているものの数が足りない貧血のことです。
あとで解説しますが、非再生性貧血は赤血球が作られていない点で
まったく違います。
失血性 外傷、寄生虫、消化管潰瘍、血液凝固異常など
溶血性 免疫介在性、感染性、化学・中毒物質、機械的破壊など
・失血性(怪我や胃や腸に潰瘍ができて出血している)
・溶血性(免疫の病気や中毒で血液が壊れている)
の2種類があります。
非再生性貧血
非再生性貧血は貧血状態になっても血液が作られないタイプを言います。
貧血が進んでも、赤血球が増えないため輸血するなどの治療が必要になることがあります
・ウイルスなどの感染症
・腎不全やガンなどの慢性的な病気
・骨髄の病気
・甲状腺機能低下症や副腎皮質機能低下症などのホルモンの病気
・栄養失調
などがあります。
以上から犬の甲状腺機能低下症の場合、
もし貧血になるとしたら非再生性貧血ってことです。
症状が悪化すると輸血が必要になることもあるので
かなり怖いですね。
犬が甲状腺機能低下症になると貧血する原因
ではどうして犬が甲状腺機能低下症を起こすと
非再生貧血を起こす事があるのでしょう?
まず日本内科学会雑誌の引用記事をご覧ください。
以下日本内科学会雑誌『汎血球減少症を合併した甲状腺機能充進症の1例』より引用
引用元URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine1927/59/8/59_1117/_pdf甲状腺ホルモンはerythropoietinを介して赤血球産生を促進ると考えられているが,血液幹細胞への直接刺激作用を示す成績も報告されている。
以上引用終了
erythropoietinはエリスロポエチンというホルモンのことです。
エリスロポエチンは赤血球を作るのに必須のホルモン。
甲状腺ホルモンによってエリスロポエチンが活発になるわけです。
甲状腺機能低下症になり甲状腺ホルモンの量が不足すると
エリスロポエチンがうまく機能しなくなります。
次にウィキペディアの引用記事をご覧ください。
以下Wikipediaより引用
引用元URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%83%9D%E3%82%A8%E3%83%81%E3%83%B3エリスロポエチン(英語: Erythropoietin; 略称: EPO)とは、赤血球の産生を促進する造血因子の一つ(ホルモンともサイトカインとも)。分子量は約34000、165個のアミノ酸から構成されている。血液中のエリスロポエチン濃度は、貧血、赤血球増加症などの鑑別診断に用いられる。腎性貧血の治療に主に使用されているが、ドーピングにも使用され問題となっている。
以上引用終了
上記から犬が甲状腺機能低下症を起こすと甲状腺ホルモンの量が不足し
その結果、エリスロポエチンがうまく機能しなくなり
赤血球が作られなくなり、非再生性貧血を起こすというメカニズムです。
甲状腺機能低下症によって非再生性貧血を起こしているなら
治療はこちらの記事で解説しているお薬を使います。
⇒犬甲状腺機能低下症の薬の種類を現役獣医師が解説
以上で、犬が甲状腺機能低下症を起こすと
貧血を起こす理由について解説しました。