猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)について獣医師がわかりやすく解説

※アフィリエイト広告を利用しています

猫免疫不全ウイルス感染症 猫エイズ

猫免疫不全ウイルス(Feline Immunodeficiency Virus)は
レトロウイルス科レンチウイルス属のウイルスです。
人間のエイズ(HIV)と同じ属なので、怖い、治らないというイメージを
持っている方が多いのではないでしょうか。

そんなことから飼い主さんにわかりやすく説明するときは
猫免疫不全ウイルス感染症を
猫エイズ(ウイルス)と言ったりもします。

ただ、人間のエイズと猫エイズが同じ属だからと言って
症状や感染経路などがまったく同じというわけではありません。
違う点もあります。

とはいえ、おおむね猫エイズと人のエイズは同じなので
うつったら一気にウイルス量が増えたりはしません。

2020年11月現在、人間の間で爆発的に感染が広がっている
コロナウイルスみたいな感染拡大は猫エイズでは起こらないってことです。

ちなみに猫ちゃんのコロナウイルスはこちらで解説しています。
猫コロナウイルスとは?獣医師がわかりやすく解説

この記事では猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)について
実際に日々猫ちゃんを診察している獣医師が解説します。
プロフィールと当ブログを作ることになったきっかけ

ブラベクトプラスなら1回でノミ・マダニ・フィラリア予防が可能です

ブラベクトプラス(猫用)は通販サイトで安く購入できます。
詳細は以下をクリック
ブラベクトプラス(猫用/1.2-2.8kg)
ブラベクトプラス(猫用/>2.8-6.25kg)
ブラベクトプラス(猫用/>6.25-12.5kg)

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の感染経路は?

猫エイズの感染経路

猫免疫不全ウイルス感染症はどうやってうつるのでしょうか?
結論としては猫ちゃん同士のケンカであったり交尾が原因でうつります。

ストロングホールドプラスならノミ・ミミヒゼンダニ・フィラリア予防が可能

ストロングホールドプラスは通販サイトで安く購入できます。
詳細は以下をクリック
ストロングホールドプラス(子猫用/2.5kg以下)
ストロングホールドプラス(猫用/2.5-5kg)
ストロングホールドプラス(猫用/5-10kg)

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の期

猫エイズ

猫免疫不全ウイルス感染症の病態としては

・急性期(Acute phase(AP))
・無症候性キャリアー期(Asymptomatic carrier(AC))
・持続性リンパ節腫大期(PGL)
・AIDs関連症候群期(AIDS-related complex(ARC))
・後天性免疫不全症候群期(AIDS)

があります。

で、急性期から後天性免疫不全症候群期と病態が進行していくのですが、
AIDs関連症候群期くらいになると、鼻がグズグズしたりとか口内炎ができたりします。

ただ、おおむねAIDs関連症候群期くらいで生涯を終える猫ちゃんが多い印象です。
後天性免疫不全症候群期になって免疫不全状態になってしまう猫免疫不全ウイルス感染症の猫ちゃんは
あまり見かけません。

ブラベクトプラスなら1回でノミ・マダニ・フィラリア予防が可能です

ブラベクトプラス(猫用)は通販サイトで安く購入できます。
詳細は以下をクリック
ブラベクトプラス(猫用/1.2-2.8kg)
ブラベクトプラス(猫用/>2.8-6.25kg)
ブラベクトプラス(猫用/>6.25-12.5kg)

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の感染率

猫エイズの感染率

ある論文データによると、少なくとも週に1回外に出てしまう飼い猫に対して
猫免疫不全ウイルスの抗体陽性率は約23%ということです。

また、このデータによると

猫免疫不全ウイルスに感染しやすくなる危険因子として

・大人のオス猫ちゃん
・猫同士の喧嘩経験がある
・何らかの病気をもっている

という3つが挙げられています。

ストロングホールドプラスならノミ・ミミヒゼンダニ・フィラリア予防が可能

ストロングホールドプラスは通販サイトで安く購入できます。
詳細は以下をクリック
ストロングホールドプラス(子猫用/2.5kg以下)
ストロングホールドプラス(猫用/2.5-5kg)
ストロングホールドプラス(猫用/5-10kg)

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)のサブタイプ

サブタイプ

猫免疫不全ウイルスにはサブタイプがあります。
サブタイプというのは猫免疫不全ウイルスをさらに細かく分類するためのものです。
遺伝子配列でサブタイプを区別しています。

そしてサブタイプはAからFまで存在しています。
特に日本だとサブタイプAからDまでが存在していると言われています。

日本の場合

・サブタイプAは西日本と北海道の一部
・サブタイプBは東日本
・サブタイプCは愛知県と三重県に多い
・サブタイプDは北陸と九州に多い

で多く見られます。

猫の飼い主
猫の飼い主
サブタイプごとに症状って違うんですか?
多少の違いはあるんだけど、
サブタイプによって症状に大きな差はないと
言われているよ。
獣医師
獣医師

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の臨床症状

FIVの臨床症状

もし猫ちゃんが猫エイズにかかったら
どんな症状が出るのでしょうか?

最初は熱が出たり、リンパ節が腫れたりします。
症状が進んでくると下痢をしたり、非再生性貧血を起こしたり血小板減少症を
起こしたりします。

他にも糸球体腎炎やブドウ膜炎を起こすこともあります。
これはウイルスと抗体が複合体を作って、これが目や腎臓に沈着することで
起こると考えられています。

もっと症状が進行して免疫不全になってしまったら
リンパ系の腫瘍ができたり、骨髄増殖性の病気になったりします。
ちなみにリンパ腫の発症する確率は
猫エイズにかかっている猫とかかっていない猫と比べると
5倍違うと言われています。

もちろん猫エイズにかかっている方がリンパ腫になりやすいって意味です。
ちなみに猫免疫不全ウイルス抗体陽性でも一生発症しない猫もいます。

だから猫免疫不全ウイルス抗体検査で陽性だからといって
安楽死しないといけないか?と言われると、
そんなことはないと言いたいです。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)にどうやってうつる?

FIVの感染経路

どうやって猫免疫不全ウイルスが広がっていくのでしょう?
まず垂直感染があります。
だいたい猫免疫不全ウイルスが感染するケースの約50%が垂直感染だといわれています。

垂直感染というのは出産を介して母猫から子猫にうつるケースや
母乳を子猫が飲んだ時にうつるケースを指します。

他にも咬傷からうつったり、
交尾でうつったりします。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の診断

FIV検査キット

上記画像は猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の検査キットです。
▶Cと▶Tという文字辺りに一本青い線が入っていますね。
これはこの検査を受けた猫ちゃんが
猫免疫不全ウイルス感染症にかかっていない(陰性)ことを表しています

ところで、この猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)の検査キットは『抗原』ではな『抗体』を
検出しているキット
なんです。

猫の飼い主
猫の飼い主
先生、何が言いたいんですか?
子猫はお母さん猫から初乳などを通して猫エイズなどから
身を守るための移行抗体ってのをもらってるんだ。
子猫ちゃんげ猫エイズにかかってなくても、
移行抗体が検査キットにひっかかって
陽性になることもあるんだ。
獣医師
獣医師

猫エイズワクチン

他にも当院でも扱ってますが、FIVワクチン(猫免疫不全ウイルス感染症のワクチン)を
猫ちゃんに接種すると抗体が増えるため、検査キットを使うと陽性になる可能性が高まります。
本当はワクチンを打った猫ちゃんは猫エイズに感染していないのにです。

つまり、動物病院でよくやっているFIV(猫免疫不全ウイルス感染症)検査キットだと
ワクチンで抗体が増えているのか、
実際に猫免疫不全ウイルスに感染しているから抗体が増えているのか
区別ができない
ということです。

よくあるケースとして他の動物病院で
生後6週くらいの子猫ちゃんに猫免疫不全ウイルス(FIV)の検査キットを使って
陽性と診断されたけど、その後、心配になって
当院を受診し再度同じ検査をすると陰性に変化していることがあります。

『生後6週=母猫からの移行抗体による陽性』が
生後60日くらいになると母猫からの移行抗体の影響が消えるので、
再度検査すると陰性になってしまうんですね。

これを動物病院業界では『陰転(いんてん)』といいます。

これが猫免疫不全ウイルスの検査キットの落とし穴です。
この検査キットは抗体をチェックするものだからです。
抗体はウイルスそのものではありません。
猫ちゃんの体がウイルスに反応してできた物質です。

ただ、抗体といっても猫ちゃん自身が作るものもあれば
移行抗体と言って母猫からもらうものもあるので厄介なんです。

では抗体検査をいつすればよいのでしょう?
子猫は母猫の初乳から移行抗体をもらいます。
だいたい数か月くらい子猫の体内に移行抗体が存在します。

そのため、生後6ヵ月未満の子猫が抗体検査をして
猫エイズが陽性になった場合には2ヶ月に1回くらい再検査して
本当に陽性なのか、陰転するのか見ていきます。

また、実際に猫エイズに感染し陽性になったとしても
感染初期だったら1ケ月後に再検査すると、陰性に戻ることもあります。

そういった意味では動物病院で猫エイズの検査が陽性だったと言われ
ショックを受けたとしても、
1ケ月から2か月後くらいに再検査をお願いしたほうがよいでしょう。

それから、今のその猫ちゃんがどういう状況なのか、
病期が一つの目安になります。

FIV

”フェローバックスFIVワクチンパンフレット”より

上記画像でFIVに対する抗体応答が抗体価です。
抗体価を見ていくと急性期からずっと上がって維持されていますね。

それからCD4陽性Tリンパ球数というのは簡単にいうと
猫エイズと戦う細胞の数という理解で大丈夫です。

で、CD4陽性Tリンパ球数は右に進む(進行する)とどんどん下がっていきますね。

ウイルス量は急性期で一度上昇しますが無症候キャリアー期で下がります。
この時期の猫ちゃんは比較的元気です。

ですが、持続性リンパ節腫大期(PGL)をすぎ、
AIDs関連症候群期(AIDS-related complex(ARC))あたりから免疫不全になってくると
リンパ球も減り、ウイルス量は増えてきます。

この時期は他の猫ちゃんにうつす可能性が高くなってきます。
ウイルス量が増えるので、唾液などにウイルス量も増えてくるので
ケンカや交尾から他の猫ちゃんにうつしてしまいます。

こういった症状とかウイルス量とかリンパ球などから
総合的に猫ちゃんが猫免疫不全ウイルスにかかっていないか
診断していきます。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の治療方法

猫エイズの治療

もし猫ちゃんが猫免疫不全ウイルスに感染しているとしたら
まず治療が必要かどうか考えることになります。
そもそも猫免疫不全ウイルス感染症は治る病気ではありませんから。

ですから、たとえば免疫不全状態にあるのかどうか?
免疫不全状態だと、いろんなばい菌とかカビに感染しやすくなります。
傷が治りづらくなったり、真菌症によりかゆみや脱毛の症状が出たりします。

そんな場合には抗生物質とか抗真菌剤などで猫エイズでなく
カビやばい菌の治療をします。
猫ちゃんに使う抗生物質

あと猫エイズが進行すると貧血や下痢の症状が出るので、
下痢や貧血の治療をすることがあります。

あとウイルスそのものの治療方法としては
抗ウイルス薬を使う場合もあります。

たとえば逆転写酵素阻害剤みたいなのもありますが、
値段的にも効果的にも疑問が残ります。

猫 インターフェロン

あとインターキャットで治療することもあります。
猫免疫不全ウイルス陽性の猫ちゃんに対してインターキャットを皮下注射して治療します。
投与量は体重1㎏あたり10の6乗Uです。

すると生存期間に影響はなかったものの、
症状が少し楽になったという研究結果も存在します。

なので、「どうしても症状を楽にしてあげたい」という場合には
インターキャットによる治療はやってもいいかもしれませんね。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の予防方法

アルコール消毒

ではどうやって猫免疫不全ウイルスの予防をしたらよいのでしょう?
猫免疫不全ウイルス(猫エイズ)はとても感染力が低いですし
環境中での生存率が低いです。

ですから、そこまで必死になって予防策を講じる必要はありません。
上記画像は当院でも使っているアルコール(イソプロパノール)ですが、
こういったアルコール消毒で十分です。
【即納品】昭和製薬 イソプロ50% 500ml【第3類医薬品】イソプロパノール50%

アルコール消毒液をスプレーするボトルに入れるなどして
猫トイレとかケージとかをシュッシュと消毒するくらいで十分でしょう。
【日本製】ダイヤスプレー 容量500ml(ピストルタイプ)園芸・アイロン・生け花・理容室など
(ただすべて自己責任でお願いします)

ちなみに
猫が集団で生活しているところに猫免疫不全ウイルスにかかっている猫を入れたら
どうなったか?という論文があります。

この論文の場合、
集団生活している猫の約3割が猫免疫不全ウイルス抗体陽性です。
逆に7割の猫は抗体陰性(かかっていない)です。

すると7割のかかっていない猫のうち約3割が
新たに猫免疫不全ウイルスにかかったそうです。

たとえば10頭のうち7頭が猫免疫不全ウイルスにかかっていなかったけど、
この7頭のうち2~3頭が新たに猫免疫不全ウイルスにかかってしまったってことです。

この論文からわかることは
FIV(猫エイズ)というのは感染の蔓延というのは
すごく問題になるほどではない
ということになります。

当院でも多頭飼いで、そのうち1頭がFIV陽性(猫エイズにかかっている)けど
残りの猫ちゃんはFIV陰性(猫エイズにかかっていない)ケースをよく診ますが
「陽性猫と陰性猫で部屋を分けつつ、アルコール消毒すれば感染する確率は
かなり低いですよ」と飼い主さんにはお話ししています。

ただ、絶対大丈夫とかそういうことは言えませんけどね。

FIVワクチンについて

FIVワクチン

猫エイズ(猫免疫不全ウイルス)にはワクチンがあります。
もちろん日本にもあって当院でも導入しています。

この猫エイズワクチン(FIVワクチン)は先ほど解説したサブタイプだと
サブタイプAとサブタイプDをもとに作られています。

サブタイプAは西日本と北海道の一部に多いですし、
サブタイプDは北陸と九州に多いと解説しましたが、
この地域で暮らしている猫ちゃんには特にFIVワクチンは意味があるかもしれませんね。

でもサブタイプAは絶対に東京に存在しないとか
そんなことはありません、あくまで傾向です。

ですから、猫エイズが心配な飼い主さんはFIVワクチンの接種を
検討してみてください。

ただ、FIVワクチンにも問題点があります。
先ほど解説したように、FIVワクチンを接種したら
その猫ちゃんは猫エイズに対する抗体ができます。

FIV検査キット

そして猫エイズにかかっているかどうかの検査は
先ほど解説したように抗体検査です。

ワクチンで抗体が増えたら、もしかしたらFIV抗体検査で
陽性が出る可能性が否定できません。

また、人間のエイズって今のところワクチンが存在しません。
なぜなら、人間のエイズの場合、ウイルスが変化しやすいから
ワクチンを作りにくいってのがあるからです。

猫エイズワクチンはサブタイプAとサブタイプDという代表的なものが
予防できるようにはなっています。
でも、免疫不全ウイルスって
人間のエイズワクチンができないくらい変化しやすいわけですから
猫のFIVワクチンも、100%の予防効果があるとはいえないでしょう。

でも、FIVに感染しやすい環境(多頭飼いでうち1匹はFIV陽性とか)だったら
FIVワクチンを検討したほうがよいでしょう。
感染リスクを低く抑えることができるでしょうから。

あとFIVワクチン接種後だと、抗体検査をすると
実際には猫エイズにかかってなくても陽性になる可能性があります。
必ずワクチン接種前にFIV抗体検査を受けるようにしましょう。

以上で解説を終わります。

ブラベクトプラスなら1回でノミ・マダニ・フィラリア予防が可能です

ブラベクトプラス(猫用)は通販サイトで安く購入できます。
詳細は以下をクリック
ブラベクトプラス(猫用/1.2-2.8kg)
ブラベクトプラス(猫用/>2.8-6.25kg)
ブラベクトプラス(猫用/>6.25-12.5kg)

関連記事

ページ上部へ戻る