犬の肥満細胞腫とは何か?特徴を獣医師が解説

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肥満細胞腫

この記事では犬の肥満細胞腫とはどんな腫瘍なのか
犬の肥満細胞腫の特徴を実際に犬の診療をしている獣医師が解説します。
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犬の肥満細胞腫の特徴:総論

肥満細胞腫

肥満細胞腫とは免疫にかかわる細胞の一種である
肥満細胞が腫瘍化したものをいいます。
診察でよく質問されることがあります。
肥満細胞腫といっても肥満になるとできるガンのことではありません。

肥満細胞≠肥満』ってことです。

それから

肥満細胞腫は

・皮膚
・肝臓
・脾臓
・腸管

などにできます。

ですが、ほとんどは皮膚にできます。
あるデータによると約90%は皮膚にできるといわれています。

皮膚にできることが多い肥満細胞腫ですが、
単独でできることがほとんどです。
でも複数の場所にできることもあります。

また犬にできる皮膚がんの約20%は肥満細胞腫といわれていて
皮膚がんの中では一番多いです。

パグ

たとえば乳腺腫瘍なら基本的にメスしか起こりませんし
肛門周囲腺腫という腫瘍は雄しか起こりません。
こんな感じで性別によって腫瘍のできやすさが違うことがあります。
では肥満細胞腫はどうでしょう?
結論として性別による差はないといわれています。
どちらが起こりやすいとかはないよって話です。

次に好発犬種。

好発犬種(できやすい犬種)は

・パグ
・ボクサー
・ボストンテリア、
・ゴールデンレトリーバー
・ラブラドールレトリーバー
・シュナウザー
・コッカースパニエル

などです。

ですがどんな犬種にも肥満細胞腫はできます。

犬とフェレット
それから肥満細胞腫は動物種によって悪性の方が多いか
良性の方が多いか違ってきます。

悪性とは転移して命の危険が及ぶ腫瘍のことで
良性とは転移しないで命の危険が少ない腫瘍のことです。
良性でもどんどん大きくなって臓器を圧迫したりして
命を削るような腫瘍だってあります。
だから良性でも『命の危険が少ない』という表現になります。

では肥満細胞腫はどうでしょう?
犬にできる肥満細胞腫は悪性がほとんどです。
だから放っておいたら全身に転移して命を落とす危険性がある危険な腫瘍だってことです。
でも人間や猫、フェレットは良性が多いです。
こんな感じで動物種によって
同じ肥満細胞腫でも一般的に悪性か良性か違ってくるという特徴があります。

では犬にできる肥満細胞腫の場合、
どこに転移することが多いのでしょう?

犬の肥満細胞腫で転移する可能性の高い場所は

・肝臓
・リンパ節
・骨髄
・脾臓

などです。

皮膚にできる犬の肥満細胞腫の特徴

手術

皮膚にできた肥満細胞腫は見た目よりも裾野が広いです。
裾野(すその)とは山麓の緩やかな傾斜地のことです。

なので皮膚上から見える肥満細胞腫が山頂だとしたら
皮膚上からは見えない(皮膚の中に存在する)裾野にも肥満細胞腫が
存在するってことです。

だから肥満細胞腫を摘出するための外科手術では
見た目以上に広範囲に切除する必要があります。
中途半端の切除では再発・転移の恐れがあります。
かなり厄介な腫瘍だということです。

私が実際に経験した症例では足先にできた肥満細胞腫に対して
肩から下を断脚したというのがあります。
それくらい犬にできる肥満細胞腫は転移性が高くて
命に関わる恐ろしい腫瘍なんだよってことです。

しかも肥満細胞腫は形だけで見分けるのは不可能です。

・表面が潰瘍化したもの
・脱毛を伴っているもの
・大きいもの(10㎝とか)
小さいもの(3cm以下)
・赤くなっているもの
・イボみたいなもの

などいろんな形や変化がみられます。

つまり『肥満細胞腫=これ!』みたいなのはないよってことです。

しかも肥満細胞腫、大きくなったり小さくなったりすることがあります。
ただ小さくなったからと言って安心できません。
小さくなっても悪性度が高いものも存在します。

見た目で悪性度を判断できないよってことです。
現在は退官されているが、腫瘍の権威の先生に弟子入りしたことがあるのですが
その先生が肥満細胞腫は忍者みたいな腫瘍だと言っていました。

犬の肥満細胞腫の特徴:肥満細胞ってどんな細胞?

細胞質

肥満細胞は

・人間にも犬にも猫にも存在する
・骨髄由来の細胞
・炎症、アレルギー反応など体を守るための反応に重要な役割を果たす
・肥満細胞の細胞質にはいろんな物質が存在する

といった特徴があります。

ちなみに細胞質とは細胞の細胞膜に囲まれた中で核以外の領域のことです。

犬の肥満細胞腫の特徴:腫瘍随伴症候群とは?

ヒスタミン

肥満細胞の細胞質に含まれる物質例

・ヒスタミン・・・蚊に刺された⇒痒くなる作用、胃酸の分泌促進⇒胃潰瘍の原因
・ヘパリン・・・血が止まりにくくなる(血が固まらないようにする)

などがあります。

それから
・腫瘍随伴症候群というのは肥満細胞腫の合併症のことです。

肥満細胞腫による腫瘍随伴症候群として

●消化管潰瘍
●傷の治りが悪くなる
●血液が固まらなくなる
●肺水腫
●低血圧
●ダリエ徴候(腫瘍が急激に赤くなるなど)

などがあります。

ヒスタミン

肥満細胞腫ができると
腫瘍化した肥満細胞から大量のヒスタミン放出されます。
すると肥満細胞腫ができた周囲が赤く腫れたり潰瘍ができたりします。
これをダリエ徴候といいます。

他にも嘔吐や下痢を起こしたり
血が止まらなくなったり血圧が下がってショック状態に陥ることもあります。

あとかゆみの症状から
気にしてなめたりかきむしったりといった症状が出ることもありますし
かきむしって出血したら血が止まりにくくなったりすることもあります。

最後に絶対にやってはいけないことを解説します。
腫瘍化した肥満細胞を刺激(揉んだり触ったり)するのは絶対にやめてください。
ヘパリンやヒスタミンの影響で腫瘍が真っ赤に腫れあがることがあります。
しかもヒスタミンが放出されますからショック状態になる可能性だって否定できません。
だから絶対に触らないようにお願いします。

もし触ってしまったら動物病院ではこちらのような
抗ヒスタミン薬を処方します。
アタラックス(Atarax)25mg

さっきも言ったように肥満細胞腫からはヒスタミンという
ショックを起こしたりアレルギーを起こす物質が放出されるからです。

だから症状が出る前にあらかじめ抗ヒスタミン薬を投与します。
アタラックス(Atarax)25mg

もし皮膚にしこりを見つけたら動物病院へ行くようにしてください。

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